サポートエンジニアのひとりごと(旧.本格焼酎忘備録 新館)

サポートエンジニアとして、日々の業務などから思うところをつらつらとアウトプットするBLOGです。誤解の多いサポートエンジニアという職種について、皆様の理解が深まれば幸いです。

サポートエンジニア

サポートとストレス

今回はサポートエンジニアが抱えるストレスについて述べてまいります。
社会人であれば、多かれ少なかれ仕事におけるストレスというのは、多々抱えているものです。システムエンジニアであれば納期に間に合うかどうか、プログラマであれば不具合の修復が思うようにいかないですとか、営業であれば抱えている目標数字との戦いなど。
しっかりとしたサポートエンジニアとしての業務を任されている場合、その多くが対人ストレスになります。サポートエンジニアの業務は、お客様と社内にいるプログラマ・システムエンジニア・営業や外注の委託先との間に立って、両方の状況を理解しながら、折り合いを付けつつ、お客様満足をいかに高めていくか、という仕事です。社内外の人から時に怒られ、時に怒鳴られ、時に突発の休日出勤が発生するなど、精神的なストレスは他の職種とは大きく異なります。以前、たまたま知り合った方に精神的に磨り減る毎日をどう過ごすか、という相談を受けた際にはこう回答しました。「サポートの仕事は人があってのものがほとんどなので、残業をしても回答が返ってこないことが多いのが現実です。サポートエンジニアは時間内で効率よく業務をまわして、なるべく残業せずに早めに会社を出て、余暇活動で仕事のことを一切考えない時間を毎日必ず作ることだ。」と。
特に社内のプログラム修正待ちなどでは「依頼しているのに早く帰るのは悪いから」と社内に残って明日やれる仕事をやってしまうことが多々ありますが、それはサポートエンジニアの精神ストレスを高めてしまうよくないやり方です。また、そうした行為は逆に修正をしてくれている人に対するプレッシャーになることもあります。早く帰れるようであれば早く帰るようにして、プログラマさんの尽力で修正が終ったら飲むのが好きな人なら一緒に飲みに行くとか、カラオケが好きな人なら一緒にカラオケに行くとか、別の方法での感謝を実践するべきです。もちろん、そうした時間外活動ではなく、大げさなくらい感謝をするといった方法が有効な場合も多く存在します。仕事なので修正するのは当たり前ですし、相手もそれでお金を得ている以上、ビジネスライクでいいと思われる向きもあるかもしれませんが、人はそんな無機質な存在ではありません。修正してくれたことに対して感謝をする、そのちょっとした心がけが相手のストレスを軽減させ、ひいては自分のストレスも軽減するきっかけとなっていきます。
人と人との接点にいるサポートエンジニアは対人ストレスとの戦いではありますが、ちょっとした心がけで軽減させることが出来ます。うまく対応して毎日を乗り切り、お客様に喜んでもらえるようにお互い頑張りましょう!

最悪の事態を想定せず忌避する日本社会

日本社会ではサポート職というのはあまり重視されず、足がかりにしてほかへ行こうという人が多い職種です。しかし、諸外国ではサポート一筋という方が結構いらっしゃいます。この違いはなんでしょうか。

サポート職というのは常に最悪の事態を考えます。最悪の事態がどうなるかを考えながら日々対応するのがサポート的な考え方なわけです。しかし、日本社会では「いまから失敗したときのことを考えてどうするんだ」といわれてしまいます。福島第一原発などはまさしく最悪のケースを想定せず先送りにしてきた結果といえます。これが大きな違いです。

ここでいう最悪の事態がどうなるかを考えるというのはなにも絶対に失敗しないように完璧な防御を固める、ということではないのです。現状なされている問題発生時の防御壁すべてが消失してしまった場合にどのような対応を取っていくのか、という点を想定するのがサポート職の考える最悪の事態です。ですからはじめから場当たり的な対応をしていくのではなく順番に対処を進めていきます。

日本社会は諸外国に比べて住みやすいいい社会だと思いますが、「失敗を想定しない」という点が決定的に欠如してしまっているためにひとたび何か大きな問題があると「想定外」が繰り返されてしまうのです。

日本企業のサポートはどうも場当たり的な対応が多すぎると思います。それは最悪の事態は「来ないもの」と空想し、サポートに掛ける費用は無駄な費用としてしまう誤った方向性にあるのではないかと考えます。これからを考えると日本企業に足りないのは最悪の事態に備えるサポート専門職の養成と地位向上が極めて重要だと覚悟を決めることだと思います。

サポートがまずいと徐々に顧客が削られる―楽天ブックスの問題から―

3期連続で最高益となった楽天ですが、足下は少しずつ削られているようです。

楽天ブックスが「キャンセルをキャンセル」、限定版商品など発送開始でユーザー再激怒

楽天側の事情で一度キャンセルの通知を出したにもかかわらず、「やっぱり大丈夫だったので発送します」と連絡をしてきたというニュースです。内容ですが、事前にお伺いを立てるのではなく、注文の商品を送付するということを告知しています。これは一方的に契約を履行するという宣言で、ユーザ側の事情は斟酌しないようです。楽天は以前からサポートが大変に弱いのですが、今回もその弱さを露呈してしまったようです。

ユーザ側の責でキャンセルをしたいという連絡であれば、利用規約などに則って、キャンセルを受け付けずに商品を送付するというのは十二分にある話です。これは注文時にきちんと契約内容を読んでいない消費者側の問題であり、その契約条項が妥当であるかどうかの問題は残るものの行為そのものはユーザが文句をいったところで多くの方は「注文した方が悪い」で済むでしょう。
しかし、今回の問題は、楽天側が一回キャンセルを通知しているわけで、ユーザ側には一切の責任がない事案です。こうしたケースでは、楽天側は「自分がユーザだったらどういう行為を取っているか」ということを念頭に置いて対応方法を考えなければならないのではないでしょうか。楽天は「そこで減るユーザがいても全体から見れば微々たるものだから問題ない、キャンセルされて減少する売り上げの方が重要だ」という考えからこのような行為を取ったのだと思います。もしそうであるならば、楽天はリアル店舗を構えている商店ではなく、ネットで商売をしている会社であるということを忘れてしまったのではないでしょうか。今回問題となった商品は、ネットでも人気の高いマンガの限定版商品です。つまり、ファンとしては是が非にも手元に置きたいコレクトアイテムとなります。それであれば、予約購入するファンは当然ほかに在庫が残っている店舗から購入済みであると考えるのがサポートエンジニアの考え方です。この流れで考えれば、楽天はまず該当ユーザへお詫びと購入するかどうかの質問を投げかけるべきでした。そこで、購入するという人には順次発送すればよいですし、不要という人の分はキャンセルを受け付ければいいはなしです。質問もせずに一方的に送りつければどうなるでしょう。「二度と使用しない」という人が出るだけでなく、周囲に「こういうことがあってね」という話が広がっていきますし、特に今回のようなケースではネットに話が残り続け、かなりの長期にわたって影響が拡大していきます。
客側にも何らかの非がある内容であれば聴いた人の反応も様々ですが、今回のような明らかに楽天側に非があるケースは「楽天は止めておこう」というユーザを増やすだけです。楽天は早くサポートに詳しい専門家の招聘に動くべきでしょう。従来のまま、サポートを軽視して突き進んでいくと今が頂点で気がついたらすっかり足下がぐらついていたということにもなりかねない危機的な状況だと考えます。

クラウド時代はサポート時代

まず、こちらをご覧ください。

クラウド型コンテンツとはなにか?(完全版) - はてなポイント3万を使い切るまで死なない日記

クラウド時代のコンテンツ流通に関して考察した興味深い分析と提言です。この記事を読んで改めて思うのは、コンテンツ業界においても今後求められてくるのは、サポート品質ということです。従来のコンテンツについて、この記事では「パッケージを手離れよく売っておしまいというのはとても楽なビジネスモデル」と断じていますが、こうしたモデルではサポートの品質は多く求められません。売った先のことは客側のみの問題であって、コンテンツ提供元は預かり知らない部分だからです。例えばスーパーが大根を売ったとして、それをおでんにしようが、大根おろしにしようが、スーパー側は関知しないのです。
しかし、このBLOGでは、コンテンツ産業は今後クラウド型に移行する必要があると解説しています。そのモデルの場合、今までのような売り切りではなく、一種のライセンス販売という形になると長年にわたるコンテンツ提供を行う必要があります。そうすると必然的に売ったあとのことも想定していく必要があるのです。売り切り型の場合、大根は新鮮で形が揃っているかどうかが問題でした。しかし、これからは料理の仕方やレシピなどを提供して、大根を最後まできちんと使い切ってもらうところまで買った人に付き合う必要が出てきたということです。
そう考えるとコンテンツ産業にもサポートが必要になってきたということでしょう。ここで例示されている「銀行預金」などは、大口の富裕層を捉まえるために様々なサポート体制を構築しています。金利が高くてもサポートがない金融機関を除外する層は確実に存在しています。同じようにコンテンツが面白くてもサポートがだめだと二度と利用しない、そうした方向へシフトしていくのです。コンテンツ産業もクラウド型へ移行していくのであれば、いまからサポート体制を構築する準備は重要ではないでしょうか。

サポートに精通した責任者がいないことによる問題の実例――グルーポンおせち騒動を題材に

昨年末にこのような記事がASCII.jpに掲載されました。

共同購入のグルーポン、圧倒的強さの秘密をCTOが語る

この記事の中で取材を受けたCTOは1時間弱で入社が決まったそうです。一方でグルーポンはバードカフェのおせち騒動で1月1日に対応策を発表、返金方法やスケジュールに関しては1月5日まで先送りしました。

雇用は1時間もかからずに決定できるにもかかわらず、顧客サポートは実質的に1月5日まで放置とあまりにもバランスを欠いています。また、返金と5000円相当のお詫びのみという対応は、消費者心理を判っていない頭だけで考えられた内容だといわざるを得ません。

何が問題なのか。
まず、12月31日に苦情が届き始めたにもかかわらず、翌日の昼過ぎまで謝罪文が公表されなかったことです。これがレストランの食事券などであればこのスピード感は賞賛されますが、今回の問題はおせちであるということです。おせちに対する日本人の気持ちや思い入れを理解していれば正月の昼過ぎまで何も発表しないというのはありえない話です。1月1日13時発表の内容くらいは12月31日中に出すべきでしょう。また、グルーポン社は少なくともメールアドレスを把握しているわけですから購入者に対してメールで謝罪を入れる必要があります。今回のケースでは時間勝負なところもあるので、もし電話番号を把握しているのであれば電話でも事情説明を入れるべきだったでしょう。

次に5000円相当のお詫びという問題です。今回のようなケースで消費者が思うことは「なぜこんな商品を売る会社にクーポン発行を許したのか」「クーポン発行会社に対する審査体制はどうなっているのか」の2点が最大です。購入代金の返金はもちろんですが、一番求められている情報はそこです。消費者側は「グルーポンに掲載されている会社だから大丈夫」という一種の安心感を持ってクーポンを購入しているわけです。それを裏切った点についてはいまだに「バードカフェ(横浜)「謹製おせち」についてのお詫びとご報告」の内容しかありません。今後再発しないのは当たり前のことで、なぜこうなったのか、という点がきちんと報告されないと「CEOアンドリュー・メイソン:「謹製おせち」お詫び」に書かれている
* クーポン商品の提供会社に対する事前審査を厳格化いたします。
* クーポンの上限枚数の明確な考え方を導入します。
* クーポンご購入者様からの専用お問い合わせ窓口を設置いたします。
* お客様、加盟店舗様に一層安心して弊社サイト「GROUPON」をご利用頂けるよう、社内教育の更なる拡充並びに業務管理体制の強化を図ってまいります。
という声明を見ても安心できないのです。サポートエンジニアである私から見ると「上限枚数の基準が設けられていなかった」「購入者専用問い合わせ窓口がなかった」という時点であまりにもサポートというものを軽視したありえない事態なのですが……。

さらにCEOの声明が日本の消費者の心情を逆なでしているのも問題です。「CEOアンドリュー・メイソン:「謹製おせち」お詫び」にこう書かれています。
グルーポンは未知の領域を開拓しているビジネスです。ご近所、地元の商業をインターネットの世界につれてくる前線にいると考えております。まだ地ならしされてない道であり多くの障害もあり、今までも失敗をし、これからもそうかもしれません。

消費者側がこういって慰めるのならばともかく、自分たちから「今後も失敗するけど許してください」とは絶対にいってはならないコメントです。ここにもきちんとしたサポート責任者がいない弱さが出ています。

このBLOGでは以前よりIT企業におけるサポートに対する考えの甘さを指摘してきました。結局、今回の問題もサポートを軽視したつけが出ているのです。お客様は神様ではないので時にはその要望を切り捨てる必要もあります。そうしたことも含めて、CTOやCFOなどと同じようにCSO(Chief Support Officer)を設けて、今回のような問題が発生しても機動的かつ適切に動けるよう、組織を構築していく必要があるのです。IT企業にいま最も求められている組織はCSOが統括する総合的なサポート組織です。
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